臼の鑑賞(4)刀痕・塗装(4-5)
刀痕(道具)による鑑賞
より深く臼を理解するためにも、刀痕を気にして欲しい。刀痕で職人の技術や息づかいがわかる。木を削っただけの臼はごまかしのできない、味わい深いものが多い。
また、チョウナや台カンナで削った面はサンダーや電気ガンナで削った面のように毛羽立たず艶があり滑らかなため、水を吸い込まずにカビが生えにくい。
外側の仕上げ
- オノ…粗彫り用だが、仕上げもオノの場合がある。刀痕が一定せずに荒い。
- チョウナ…斜めに等間隔に刀痕が付いていて美しい。
- 台ガンナ…もっともきれいな仕上げ。刃物で削ることで艶が出る。
- 電気ガンナ…回転する刃で削るため、細かく等間隔に縞のような筋が残っている。
- チェンソー…チェンソーでできているのではなく、刃が入りすぎて残ったもの。
- 旋盤…細かい筋が付くが、多くの場合はサンダーなどで仕上げている。
- サンダー…つやが出ない。細かい削った筋が残っている場合もある。
内側の仕上げ
- ヤリガンナ…内側の仕上げ用。古い臼では多い。
- 手ヂョウナ…細かい削り痕になる。通常はヤリガンナなどを掛けて仕上げる。
- 丸ガンナ…内側の仕上げ用。ヤリガンナとの区別は難しい。
- 旋盤…細かい円の筋が付く。
- サンダー…刀痕がなく、つやが出ない。細かい削った筋が残っている場合も。
塗装の有無による鑑賞
塗装品と無塗装品は見た目でわかる。塗装したものは膜を張っているのでツルツルしてツヤがある(つや消しの塗料もある)。
- 無塗装…本来の臼の仕上げ方法。昔の臼はほとんどは無塗装。
- 塗装…ひび割れの軽減、汚れ防止などの理由による。通常はウレタン系の塗料を塗る。水性と油性があり、家具や盆などの木工品に広く使われる最もポピュラーな塗料。透明やニスの様な茶系の皮膜ができる。皮膜が剥離することがあり、内側には塗らない。自然塗料の柿渋は塗膜が薄く水に弱いが、現在は臼に塗られることはない。また、漆は木材に浸透し、堅牢で熱や酸、アルカリに強く食器類に最適だがとても高価なため、臼には使用しない。