第五章 杵の研究

杵の鑑賞(2)材質(5-3)

芯持ち材と芯去り材

これは竪杵、横杵ともに関係した材料の取り方になる。丸太から杵をどう作るかということで2種類の方法がある。

芯持ち材

芯持ち材というのは枝や細い幹をそのまま利用するもので、木口を見ると芯があるもの。本来はゴミとなってしまうような細い丸太材を使うため、材料を無駄なく有効活用にはなる。昔はほとんどが芯持ち材で作られていた。しかし、芯から放射状に割れやすいため、現在はほとんど作られていない。また、丸太材の皮を取って丸く削っただけのもので、外側のシラタと呼ばれる柔らかい部分も使用しているため痛みも早い。

芯去り材

芯を避けて材料を木取りする。割れにくいので、現在の杵は芯去り材で作られていることが多い。丸太の芯部分を中心にして2分割、もしくは4分割して杵材とする。そのため、芯持ち材と同じ太さの杵を作るには、2倍以上の太さの丸太材が必要となり、無駄になる部分も多いため、とても高価になる。

竪杵の材質

竪杵の材質についてはあまり詳しい資料がない。弥生時代はカシやツバキなどの堅木が使われていた。恐らく、それ以降もカシなどの堅木を中心に使われていたと考えられる。

横杵の材質

竪杵同様に堅木で作られている。柄はほとんどが白ガシで、希にクリなどの他の材でも作られることがある。

ケヤキ

現在、最も多い臼の材料と同じため、もっとも多く普及している。流通量が多いことや仕入れたケヤキ材で傷や細い部分の臼にできないものを利用できることなども、多く作られる理由のひとつ。ただし、臼の縁を叩いてしまうと割れて壊れてしまうこともある。

カシ

棒屋(柄を作る仕事)が作ることが多い。カシにはその材の色で白ガシと赤ガシがある。赤ガシの方が堅く重いが、白ガシの方が流通量が多く、柄の材料にもなるので、現在のカシの杵は白ガシがほとんど。重いので慣れたひとには使いやすいが、堅いので臼を叩いてしまうと臼のダメージが大きい。

その他の材料

ミズメ、カエデ、ツバキ、オノオレなど、堅い木なら杵になる。