弥生時代の臼と杵の復元(8-1)
弥生時代の臼を復元
兵庫県立考古博物館からの依頼があり、弥生時代の臼と杵を復元することになった。弥生時代の臼の作り方は研究されておらず、簡単な図面しかなかった。そのため、弥生時代にはあったであろうという道具だけを使い、いろいろな削り方を試し、柄を付け替えたり仕立て直しをしたため、製作には1ヶ月半も掛かってしまった。
杵の復元は第五章を参照ください。
仕様
- 臼:クスノキ製、上部外径66㎝、底部外径62㎝、高さ60㎝
- 杵:カシ製、長さ108㎝・116㎝、太さ7.5~8㎝
使用した道具
- オノ、チョウナ、手ヂョウナ、ヤリガンナ、曲がりヤリガンナ、両刃平ノミ。
- 原木の輪切りにのみチェンソーを使用。
弥生臼復元(1)外側を作る(8-2)
外側は複雑な形をしている
今回復元した臼は複雑な形状をしている。くびれ臼に柱が4本立っている。製作するのはかなり面倒で、とくに柱とくびれ部分の隙間をどう削るかが問題だった。
外側を作る手順
クスノキの原木を輪切りにするときだけチェンソーを使わせていただいた。それ以外はすべて手道具で製作した。
- 1)クスノキの原木を用意し、臼の高さで輪切りにする(このときのみチェンソー使用)。
- 2)回りをオノで荒削りから仕上げまで。
- 3)4)5)くびれ部分と柱の削りだしをチョウナで削る。
- 6)小さいヤリガンナと両刃平ノミで細部を削り仕上げる。
弥生臼復元(2)中側を作る(8-3)
中側はすり鉢型
昔のくびれ臼はすべてすり鉢型で掘られている。現在の掘り方とは大きく異なるため、はじめに現在の臼の掘り方でオノを入れたところ、すり鉢型の側面に刃が入り過ぎて大変なことになってしまった。
中側を掘る手順
クスノキは柔らかいのとすり鉢型のため、オノを縦に入れると掘れ過ぎてしまい上手くいかない。今回はチョウナだけで粗掘りすることにした。
- 1)通常はオノで粗掘りするのだが、クスノキは柔らかいのでチョウナだけで荒削りをした。
- 2)底に近い部分は手ヂョウナを使用。ただ、この形状の手ヂョウナは出土していない。
- 3)ヤリガンナは引いて使う。刃を下向きにして底から上へ、右から左へ削り進める。
- 4)口に近い上部は刃を上向きにして左から右へ削り仕上げる。
弥生杵復元(8-4)
弥生時代の杵は竪杵
弥生時代の杵は全て竪杵で、1本の細い丸太をそのまま利用している。
仕様
- カシ製、長さ108㎝・116㎝、太さ7.5~8㎝
- ①杵の原寸大の図面と復元品。
- ②カシの原木をチョウナで荒削り。ただし、木を曲げた柄は弥生時代にはなかった。
- ③木の股を利用した柄が付いていたと思われる。
- ④仕上げ削りもチョウナだけを使用した。
- ⑤溝は両刃平ノミで彫った。
アフリカ様式の臼と杵の製作(8-5)
アフリカ様式の臼と杵を製作
NGOハンガー・フリー・ワールドが開催している「アフリカ流・イモつき大会」で使用する、アフリカ様式の臼と杵を製作しました。今後、イベントで使う予定です。
仕様
- 臼:ケヤキ製、上部外径39.5cm、底部外径36.5cm、高さ45.5cm
- 杵:ケヤキ製、長さ117cm、最大径9cm、先端径8.5cm
アフリカ様式の臼の製作方法(8-6)
くびれ臼だが、日本の作り方とは違う
アフリカ様式の臼の作り方は不明だが、日本に古くからあるくびれ臼と形が似ているので、作り方も同じではないかと思っていた。ところが、製作してみると、同じ作り方では無理な部分がある。それはくびれた箇所の形状が異なっていたのだ。柄を曲げた弥生時代の手チョウナと似た道具で製作していることは判っている。さらに参考資料の写真の削り痕から、削る方向が横方向になることが判明した。
アフリカの臼と杵の参考資料(8-7)
アフリカの臼と杵と使用方法
今回の製作にはNGOハンガー・フリー・ワールドのご協力で貴重な写真をご提供いただいた。主食のひとつであるヤムイモを茹でて臼と杵でついて作る。とうもろこしの脱穀にも使われるようだ。使い方も興味深い。くびれの部分を足で踏んで臼を押さえている。足を掛けていない臼は地中に埋まって固定されているようだ。かなりの重労働だと思うが、女性の仕事ということもわかる。
今回製作した臼と杵は今後「アフリカ流・イモつき大会」のイベントで使用する予定です。イベントについての詳細はハンガー・フリー・ワールドのホームページをご参照ください。
http://www.hungerfree.net/