第三章 木臼を作る

山形とアフリカのくびれ比較(3-5)

山形とアフリカのくびれ臼の比較

山形とアフリカのくびれ臼は形がよく似ているが、仕上げ削りの方法が全く違うことが判った。山形臼では上部は上から下方向、下部は下から上方向に削っている。ところが、アフリカ臼では上部、下部共に横方向に削っている。

形状の比較でわかる仕上げ方の違い

もちろん刀痕を見ればわかることなのだが、作り方の違いは形状に現れている。一見、よく似ているが、二箇所の異なる部分があり、その形状からも仕上げ方の違いがわかる。。

ひとつは下部のスカート状の形状である。臼を横から見た場合、山形臼は凹状(もしくは直状)に削ってある。一方、アフリカ臼は凸状(もしくは直状)になっている。これは実際にチョウナや手ヂョウナで削ってみると、削りやすさとスカート形状が一致することが判った。

もうひとつはくびれの部分。山形臼には段があり、ノコギリの痕が残っている。ところが、アフリカ臼には段がない「く」の字になっている。山形臼に段があるのは上部を削ってから下部を削る、という手順になる。上部を上から下にオノで削っていると、下部にオノが当たって刃が刺さった痕が残ってしまう。その下部のオノの刀痕をチョウナで下から上に削ることで、きれいに削ることができる。アフリカ臼のような段がない場合はこのような削り方をすると、くびれの上下にオノなどの刃の刺さった痕が残ってしまい、きれいに削るのはとても面倒になる。ところが、横削りにすれば容易にきれいに削ることができる。余談になるが、山形臼のように段がある方が指が掛かって扱いやすい。