第一章 木臼の起源

刳物の起源(1-3)

木工は縄文時代にはあった

木工の起源は石器の登場からであろう。石の割れた角で木を削ったり、切ったりできることに気づいたときに木工は始まった。石と石を打ち付けて作られた石器を打製石器という。3万年前の旧石器時代のことである。その後縄文時代には石を磨いて作った磨製石器登場し、刃物として使っていた。石器の刃物に木の柄を付けたオノやチョウナ、ノミなどがあり、建築や木工も盛んになった。

刳物は最も古い木工技法

「刳る」とは窪みを作るということで「彫る」と「掘る」と同じ意味がある。刳物とは木を刃物などでえぐって窪みをつけて作られた容器などのことを指す。手彫り・手掘りの臼とは正式には手刳りで、刳物ということになる。刳物の小さいものは匙(さじ)、杓子(しゃくし)で大きい物は木鉢、丸木舟などがある。

単純でシンプルな刳物は縄文時代からある最も古い木工技法の一つ。縄文時代には鉄器がなかったため、石器で作られていた。石器だけで作る方法もあるが、中を火や炭で焦がして石器で削ることで作っていたのかもしれない。

大型木臼は鉄器の出現で確立した

縄文時代後期から弥生時代には鉄器が登場した。この時代の鉄器はまだまだ単純な構造のものしかなった。オノ、チョウナ、ノミ、ナイフの類のものだ。だが刳物はこれらの単純な道具だけで作ることができる。木を割って、まわりを削り、刳り窪みを作るだけで容器になる。このような方法で弥生時代には多くの刳物容器が作られていた。刳物技法はこの時代に基本的な製作方法がすでに確立していたようだ。鉢や臼の場合は現在の手作りの製作方法とほとんど変わっていないと考えられる。また、弥生時代は稲作が伝わったこと時代で、脱穀用に大型の木臼が登場した。この頃の臼は全てくびれ臼と竪杵だった。

刳物と挽物(ひきもの)

椀や鉢などの器は材料を回転させて刃を当てて削る、手回しのロクロ(轆轤)で製作していた。これを挽物という。弥生時代には手回しロクロがあったという説もあるのだが確かではない。人力によるロクロでは大きな物は回すことができないため、椀や鉢などの小さいものに限られていた。大型の木鉢や臼が挽物で製作されるようになったのは、戦後になって電動の大型旋盤が普及してからとなる。