第一章 木臼と杵と刳物の起源

搗臼の起源(1-2)

臼の歴史は1万年以上

臼と杵のはじめは石の搗臼だった。1万年以上前からあった。当時は自然石を利用したもので、平らか窪んだ石の上に木の実などの食材を置き、手に持った石で砕いたり、すり潰したり、という使い方をしていた。臼は世界中にあり、人類の食生活で欠かせないもっとも重要な道具のひとつといえる。

木臼と杵の起源は縄文時代後期

本格的な木製の搗臼は弥生時代の遺跡から出土している。その前の縄文時代後期に大陸から稲作が伝わったが、同時に鉄器も入ってきている。大型の木臼は米を脱穀精白するのに欠かせないものだったことから、大型の搗臼も同様に大陸から伝わったものだと考えられる。出土した臼の数は少ないがくびれ臼で、杵はすべて竪杵だった。さらにすり鉢型に掘られている。木臼は最も古い刳物(くりもの)技法(木に窪みを掘り器などにする技法)により作られたもの。鉄器の伝来により、最低限必要な臼製作道具はすでに存在していた。製作方法も現在の手作りの臼と基本的に同じ方法で作られていると考えられる。刳物技法は最も古い木工技法で、木臼は最も古い木製品のひとつといえる。

弥生時代の銅鐸に臼を使う図が描かれている。それだけ臼は生活に欠かせない重要な道具だったことがわかる。

胴臼と横杵は江戸時代

馴染みのある胴臼と横杵の出現はずっと後になってから。弥生時代の出土品に無いわけではないが、普及は江戸時代まで待たなくてはならない。柄のついた形状は踏臼(ふみうす)が起源になっているようだ。踏臼といっても踏まれるのは杵の方で、足で踏んで体重を掛けてシーソーの先に付いた杵で搗く構造になっている。臼は木製も石製もあり、胴臼が多いようだがとくに決まりはない。踏臼は「からうす」とも呼ばれ、「碓」や「唐臼」という字が当てられる。

横杵は竪杵よりも生産性が高いために、農業生産量の増加に対応するために使われるようになったと考えられている。胴臼と横杵は同時期に出現していて、通常はセットで使われる。現在ある臼の形状は江戸時代に完成したといえる。