第四章 臼を鑑賞する

臼の鑑賞(7)木材と虫(4-8)

虫穴を見る

臼の鑑賞とは少し違うが、材料の説明の補足として木材の虫について。ここでは臼に多いケヤキを食害する虫を取り上げるが、古い臼につく虫は要注意。穴が増えていく可能性が高いので、殺虫処理をする必要がある。

立木の場合

鉄砲(テッポウ)と呼ばれる指くらいの太さの穴が空く。カミキリムシの幼虫によるもので、上下に2メートル以上も入っている。とくに公園や街路樹などの平地のケヤキは手入れで枝を切り落とすため、切り口から入ることが多い。

伐採後の丸太の場合

樹皮の下に入る虫は多いが、削ってしまうので大きな害はない。

ところが、生の木や腐りかけている木に入る虫がいる。ナガキクイムシの仲間で木を直接食べているのではなっく、カビ菌を持っていて中で繁殖させて食べている。穴に合わせてなのか円筒形の形をしている。成虫の雄が1ミリほどの小さい穴(種類により大きさは変わる)を空けて入り、フェロモンで雌を誘い込む。夫婦で穴に暮らし、はしご状の穴を空けて子孫を増やしていく。深さ10㎝以上の穴を空けることがある。材料が乾燥するといなくなるので、臼にしても使用上の問題はないのだが、小さい穴が空いているだけではなく、カビ菌で穴が黒くなるので、臼にしたときに見栄えが悪い。

臼になってからの虫

新しい臼は虫がつかない。臼が古くなるとシバンムシがつく。ごま粒のように小さい虫なのでゴミや砂粒のように見えるので、注意しないとなかなか見つからない。納屋や物置によくいる虫で、小麦粉や乾麺などの乾物や菓子類、藁、ござ、最近ではペットフードやドライフラワーなど様々なものを食害する。1ミリほどの穴を空け、繭を作る。古い臼も例外ではなく、とくに外側のシラタと呼ばれる部分につきやすいが、芯部分のアカミにもつく。

虫の駆除方法

よく穴に殺虫剤を注入すると言われるが、これは穴の中に虫がいる場合のことだが、穴が成虫の出口になっていることが多い。すると穴は留守ということになり効果がない。また、通常の木製品は燻蒸殺虫するのだが、臼に殺虫剤は使いたくない。そこで臼の場合は熱処理をするのがよい。55から60度以上になると虫は卵やさなぎまで全て駆除することができる。ただし、熱風で乾燥させると臼が割れることがあるのでご注意を。さらに臼の保管場所に虫がいる可能性が高いので、保管場所の殺虫も忘れずに。